ある意味では「介護離職」問題よりも深刻な「介護職員離職」の問題。
以前より人員不足が指摘されている介護職員。
この傾向は今後ますます加速すると見られ、団塊世代が後期高齢者の仲間入りする2025年には、全国で約38万人もの介護職員が不足すると見られています。
高齢化が進む日本において、介護職員の確保は早急に解決すべき重大問題の一つ。
この問題の解決に向けて、政府はかつて介護の現場で1年以上働いていた経験を持つ人たちを対象に、現場復帰時に最大で20万円の「準備金」を貸し出す制度を開始する準備があることを発表しました。
この準備金を受け取るにあたって、以前に離職した理由などは考慮しないとのこと。
準備金の使い道についても制限などはなく、「介護の仕事に再び就くための備えとして有効に使ってほしい」とは担当者の弁です。
結婚・出産・育児などで離職した介護経験者を主たる対象としたこの準備金制度。
貸与とはなっていますが、復帰後、2年以上の継続勤務で返済が免除される仕組みとなる予定です。
これ以外にも介護福祉士の資格取得を目指す学生を対象とした「修学資金貸与制度」の拡大も予定しています。
「修学資金貸与制度」では、養成施設に通学している人を対象に、学費として月5万円を貸与する制度です。
あくまで貸与ですので卒業後返済する義務が発生しますが、5年以上の継続勤務で返済が全額免除される仕組みとなっています。
現時点で3000人程度の学生がこの制度を利用していますが、今後のこの数を増やすべく動いていくとのことです。
2つの一時金を支給することで介護職員不足の解消を狙う政府ですが、この施策に対しては、介護業界を中心に効果を疑問しする声があがっています。
今回紹介した施策では、復帰準備金については2年間の勤続、修学資金貸与制度にいたっては5年間の継続勤務をしないと、返済義務が発生します。
薄給激務で知られる介護業界。2年間働いて20万の一時金では割に合わないとする声が多いように見受けられます。
事実、介護業界では人員不足解消のために独自に準備金を用意している施設・企業もありますが、ほとんどが十分な人員を確保することができず失敗に終わっています。
この件については、目先の一時金で人員を釣るようなことはせず、職場環境の改善や基本給の向上に向けた施策に力を入れるべきだとする意見が多数ありました。
また、今回の復帰準備金の主たる対象が、結婚・出産などを理由に離職した女性であることを考え、子育て支援などを充実させ、育児後の女性が社会参加しやすい環境作りを推進したほうが、長期的には国のためになるのではといった意見もあり、いずれにしても一過性のバラマキではなく、抜本的かつ恒久的な改善を求める人が多いことがうかがえます。
解決には困難を極める問題だと思いますが、介護を必要とする高齢者のため、または介護を行う労働者自身のためにも、問題解決に向けた更なる動きに期待します。