厚生労働省は2016年度から、「認知症カフェ」で交流を行っているボランティアを、認知症の方の自宅に訪問するサービスを開始することを発表しました。
開催場所が離れていて行けない、家族の仕事の都合が合わず参加できないというような理由からカフェに参加できない人たちを対象に、ボランティアスタッフを出張・派遣することで本人・家族の支援を行うことが目的とのことです。
認知症カフェとは、厚生労働省が2012年6月に提出した「今後の認知症施策の方向性について」の中で登場した、「認知症の人と家族、地域住民、専門職等の誰もが参加でき、集う場」を提供するために行っている取り組みのことです。
2013年ごろから本格的に普及し始め、2014年には全国655か所での開催実績があります。
この認知症カフェは、地域包括支援センターや介護サービス事業者、NPO法人などが個人宅、公共施設などを借りて開催しており、認知症患者ご本人はもちろんのこと、そのご家族や、専門職の方たちが集って情報共有、意見交換を行う場として重宝されています。
そのような認知症カフェですが、さまざまな理由からカフェに参加することができず、自宅にこもりがちになってしまう人がいます。
特に認知症患者の場合、ご本人一人で外を出歩くことが難しく、どうしても外出の可否がご家族の仕事の都合などに左右されてしまうため、頻繁にカフェに通うことができない人が発生しているとのことです。
そのような方たちのケアをするためにスタートしたのが、今回のカフェボランティアの出張制度、通称『認とも』制度です。
今回の制度では、認知症カフェで働いているボランティアのうち、認知症の方とすでに顔なじみで友人のように親しくなっている人を『認とも』と命名。カフェに参加することが難しい認知症の方の自宅に出張して話し相手となり、本人及び家族の支援を行うとのことです。
認ともの認定は、地域支援推進員が行うとのこと。孤立しがちな高齢者を地域のケアネットワークに繋ぎ止めることが狙いです。
今回の「カフェ」から「認とも」へという取り組みは、言い換えれば介護サービスの主軸が「場所」から「人」へシフトしているという意味で非常に象徴的です。
安倍首相の特養増床発言などで多少の混乱はありましたが、政府としてはやはり、今後は「介護施設」よりも「在宅介護」を重視する方向で進めていくということでしょうか?
いずれにしてもご高齢の方たちが、自らの住み慣れた場所で生活を送りつつ、十分なケアサービスを受けることができるのであれば、それに越したことはありません。
今回の『認とも』出張サービスが、認知症の方たちを見守る目となり、地域コミュニティとご高齢者をつなぐ絆となることを切に願っています。