先日掲載した『一人暮らしの高齢者を取り巻く問題』の記事でも触れましたが、高齢者の孤独死というのは年々増加傾向にあります。
一説には年間4万件を超すとも噂されている孤独死の問題は、もはや対岸の火事として目を背けて良い問題ではありません。
誰にも看取られずに、一人寂しく死んでいく……。
これだけでも十分な恐怖ですが、孤独死の実情というのは、そんな生易しいものではありません。
立ち込める死臭。周囲を飛び交うハエ。辺りには生活ゴミが散乱し、足の踏み場もない。
腐敗が進んだご遺体は、もはや生前の面影を残しておらず、親しい方でも判別するのが困難なほどです。
ご遺体を移動させた後も、滲みでた体液が染みとなり、故人の無念を主張し続けます。
人の尊厳も何もかも失われた、目を覆わんばかりの惨状。それが、孤独死の現実なのです。
孤独死に付きまとう諸問題は、あまりにも生々しく、できることならば逃げ出したくなる気持ちもわかります。
しかしながら、孤独死というのは、今この瞬間にも起こっている、現実の問題です。
人はいつか死にます。これは避けることのできない宿命です。
でも、孤独死は避けることができます。
亡くなった後、少しでも早くご遺体を見つけてあげる。
ただそれだけのことで、故人の尊厳は守られ、ご遺族の悲しみも軽減できるのです。
本日はそんな孤独死の問題を無くすため、国の統計情報なども交えながら、その傾向と対策を考えてみたいと思います。
孤独死(孤立死、独居死とも)は、主として一人暮らしをされている方が、誰にも看取られることなく亡くなってしまう現象です。
その死亡時の状況から、遺体の発見が遅れることが多く、孤独死の現場は冒頭で述べたように凄惨を極めることが多いです。
孤独死という言葉は、社会の高齢化、核家族化が進んだ1970年から1980年ごろに掛けて登場。孤独死の発生件数の増加に伴い、近年急激に認知度を増していっています。
当初は、人が多く集まる都会には孤独死は発生しえないという認識が多数を示していましたが、時代が下るにつれて「都会の中の孤独」が強く認識されるようになり、孤独死は都会でも発生しうる、むしろ都会の方が孤独死のリスクが大きいと言われるようになりました。
また、最近では老老介護の問題などと関連して、一人暮らしでないにも関わらず孤独死が生じるケースなども報告されており、深刻な社会問題と化しています。
過去の事例より孤独死になりやすいと言われる人の特徴を下記にまとめます。
孤独死の概要からもわかるように、とにかく人と人とのコミュニケーションが希薄な環境に長時間さらされると、孤独死の発生リスクは大幅に高まります。
最近では、子供・孫の生活に迷惑を掛けたくないとして、ご高齢者ご自身が賃貸住宅で一人暮らしをされるケースが増えており、潜在的な孤独死リスクは高まっている状況といえるでしょう。
特に男性の場合は、人間関係の基盤が職場に依存していることが多く、定年退職・失業などで会社を離れると同時に社会から孤立化することが多々あります。
こういった退職後の孤立から抜け出すことができず、そのまま孤独死へとつながるパターンが多数報告されており、結果として男性の孤独死発生件数は、女性のそれと比較して、2倍以上の開きが生じています。
特殊なケースとしては、最後に紹介した仮設住宅暮らしをされている方の場合ですね。
大規模災害による地域コミュニティの消失、仮設住宅という慣れない環境での暮らし。こういった要素は、孤独死を招く要因となります。
事実、1995年に発生した阪神淡路大震災では、仮設住宅暮らしをされている方たちを中心に孤独死が多数報告され、大きな問題となりました。
孤独死についてより深く知るため、孤独死関連の統計データについても見ていきましょう。
とはいうものの、孤独死に関する公式な統計データというのは多くありません。
というのも、孤独死というのは法的に定義された言葉ではなく、警視庁の死因統計上にも孤独死という項目はありません。(変死といった形で集計されます)
ここでは、孤独死の傾向を掴むために厚労省が発行している「人口動態統計」の死因統計から「立会者のいない死亡」というものを抽出して、孤独死数の推計としたいと思います。
上記グラフは、1999年から2014年までの死因「立会者のいない死亡」の件数を、男女別にまとめたものです。
これを見るだけでも、孤独死が年々増加傾向にあること、その発生件数が男性に集中していることなどが分かるかと思います。
次のグラフは、全死因の合計に対する「立会者のいない死亡」の割合を、東京と全国平均で比べたものです。
東京・全国平均ともに増加傾向にありますが、東京の伸び率が群を抜いていることがお分かりいただけるかと思います。
これだけを見ても、東京を中心に「都会の中の孤独」が急速に拡大していっていることが分かるでしょう。
「人口動態統計」を元にした推計では、年間2000件前後で推移している孤独死ですが、実際の発生件数はもっと多いものと思われます。
と申しますのも、「人口動態統計」を元にした今回の集計で対象となるのは、「原因不明の死亡」のうちの「立会者のいない死亡」のみだからです。
現実にはお風呂で溺死されたり、持病・熱中症で亡くなった場合でも、発見が遅れて孤独死となるケースが多々ありますので、実際の孤独死件数はもっと多いものと思われます。
民間の調査会社であるニッセイ基礎研究所が2012年に公表した資料によると、65歳以上の死亡者のうち、6%弱が死後4日以上経過してから発見されており、その人数は男性で1万5000人、女性で5000人の計2万人にも及ぶとされています。
この2012年の資料の元となったデータは2010年のものであるため、今現在はこの数字よりもさらに多くの方たちが孤独死されていると考えられており、関係者のあいだでは年間にして3万人から4万人もの人が孤独死しているものと見られています。
この数字は今後もますます増大を続け、団塊世代が後期高齢者の仲間入りを果たす2025年には年間10万件を超すのではないかとの予想もあります。
孤独死対策が急務であることがよくわかる数字です。
特殊清掃業(孤独死された方の自宅などを専門に片付ける方)をされている方のお話によると、孤独死される方には以下のような傾向・前兆があるそうです。
「あいさつをしない」「地域コミュニティに属していない」などは、地域社会からの孤立を示す兆候ですし、部屋が荒れていくことも、健康状態の悪化に伴う身動きの不自由さを示すもので、孤独死に繋がる可能性が非常に高いそうです。
特にゴミ屋敷化している住居で孤独死が発生した場合は、通常の物件よりも遺体の発見が遅れることが多く、状況がより悪化していることが多いとのこと。
こういった兆候が見て取れた場合は、定期的な声掛けを行ってみるなど、地域における見守りをより強化していきたいところです。
孤独死問題を語るうえで避けて通れないのが、住宅への汚染問題です。
冒頭で述べたように孤独死が発生した現場というのは、とてつもない悪臭を放っていますし、また発見が遅れると腐敗した肉体や漏れ出した体液が染みとなって、床や壁を汚染します。
当然そのままでは使いものにならないので清掃をするわけですが、特殊清掃の清掃代金というのは、一般のハウスクリーニング代金に比べて、はるかに高額となることがほとんどです。
その金額は、建物の構造や遺体発見までの期間、汚染度合によっても異なってきますが、安くとも十数万から場合によっては数百万もの費用が掛かるというから驚きです。
賃貸物件で孤独死が発生した場合、その清掃費用は入居者のご遺族に請求されることになりますので、ご遺族としては身内を亡くした悲しみと併せて大きな負担を強いられることとなります。
持ち家の場合でも、孤独死による汚染が進んだ場合は、その資産価値を大きく減じる形となりますので注意が必要です。
お金の話をするとどうしても生々しくなりますが、本来ならばご遺族の支えとなるはずの財産が、ご遺族を苦しめる負債となってしまってはお互いに悲しいですよね。
そういったトラブルを避けるためにも、大切な方が亡くなられた際には、迅速にそのご遺体を見つけてあげて、キチンと供養をしてあげたいものです。
ここまでご覧いただいた方ならご理解いただけるかと思いますが、孤独死というのは定期的な声掛けや見回りをするだけで簡単に防ぐことができるものなんです。決して無くすことのできない問題ではありません。
生活様式の都市化によって失われてしまった、隣人同士の思いやり、気遣い。そういったものを思い出すだけで、劇的な改善が望める社会問題です。
とはいうものの、失われてしまった人情を取り戻すことは、そう容易くはないでしょう。
そのような場合は、見守りサービスの導入をご検討されてはいかがでしょうか?
当サイト推奨の見守りサービスならば、室内に設置した人感センサーがご利用者さまの動きを検出して見守り。
一定時間動きが検出されなかった場合は、安否確認に伺わせていただきます。
毎月の定期訪問では、ご利用者様のご自宅に直接出向いて近況をお伺いしますので、機械だけの見守りでは把握しづらいお住まいの変化についてもバッチリ確認。
ご自宅が荒れているなどの危険な兆候もいち早くチェックして、ご家族・介護者の方たちを情報共有をさせていただきます。
包括的な見守りで、ご高齢者の孤独死を防ぐ。
当サイトの見守りサービスならば、実現できると信じています。