先月、厚生労働省が新たな福祉サービスの実現に向けたプランを発表しました。
高齢者介護・乳幼児保育・障害者教育という異なる分野のサービスを一本化することで、人材不足・施設不足を解消しようというものです。
確かに介護・保育分野ともにかねてより人材不足が指摘されている分野です。
2017年には6.6万人の保育士が不足し、2025年には30万人もの介護士が足りなくなると予測されている現状、異なる業務と統合することで必要人員の削減、効率化ができるのであれば望ましいことではあります。
フィンランドの「ラヒホイタヤ」を参考にしたと言われるこの新プラン。はたして上手くいくのでしょうか。
「ラヒホイタヤ」とは聞きなれない言葉が出てきましたが、これはいったい何でしょうか?
「ラヒホイタヤ」とは北欧の国、フィンランドの保健医療の共通基礎資格になります。
この資格は日常ケアを担う人材認定を目的として、准看護婦や歯科助手、保育士やヘルパーなどの10の資格を統合する形で誕生しました。
フィンランド語の「ラヒ(身近な)」と「ホイタヤ(世話をする人)」という2つの言葉を組み合わせた造語で、「日常ケアを担当する人」くらいの意味合いになります。
現地フィンランドにおいては、「複数の労働市場を渡り歩くことにより長期的に仕事を行うことができる」「介護職員の離職者減少」「短時間・高賃金労働の実現」などといったメリットがあり、厚労省もこれらの点に着目した上での、今回の発表だと思われます。
一見して良いこと尽くめの介護・保育の一本化ですが、当の現場からは批難轟轟です。
介護ニュースを配信している「みんなの介護」が行ったアンケートでは、現役介護職員の約6割が一本化に反対。さらに保育関連の人材紹介サービスを手掛ける「ウェルクス」が行ったアンケートでは、保育関係者の77%が一本化に否定的な回答をしました。
反対の理由としては、介護と保育はそれぞれが異なった専門性を持つ作業のため、それを一本化することは不可能であるというものです。
実際、高齢者・幼児・障害者の対応には、それぞれ異なった専門的知識が求められるため、それら広範囲な作業領域を一人の人間でカバーするというのは現実的ではありません。
先ほど複数の分野を一つにまとめて成功した事例としてラヒホイタヤを紹介しましたが、この資格はあくまで各分野における初歩的(中卒レベルといわれています)な知識・対応力を持っていることを証明する資格であり、日本のように高度に細分化した介護・保育分野を統合する際の参考にはならないという意見も多数見受けられました。
いずれにしても介護・保育の現場に勤めているものの大部分は今回の一本化案に反対であり、今回の資格制度改革は既に暗礁に乗り上げつつあるのではというのが、個人的な感想です。
団塊世代が後期高齢者の仲間入りをする2025年。それまでに介護の人材不足は解消できるのでしょうか?
今後の政府発表が気になるところです。