認知症高齢者の徘徊・行方不明は深刻な社会問題となっています。
警視庁が発表したデータによると、認知症が原因と思われる行方不明者数は1万人を超えており、さらにそのうちの160人程度が発見されることなく行方不明のままとのことです。
残念なことにこの数字は例年増加傾向にあり、今後も社会の高齢化が進むにつれて、この数は増大していくことが懸念されます。
このような状況を受けて、全国自治体では高齢者向けの見守りサービス・見守りシステムを開発・導入するなどして、認知症患者の徘徊予防・早期発見に努めています。
今回ご紹介するニュースは、そんな自治体の取り組みが実を結んだケースです。
事件が起こったのは12月2日。
高崎市が運営している暮らし見守り振興センターに、「家族が行方不明になった」との緊急通報が入りました。
通報があったのは80代の認知症高齢者で、高崎市が運営している「はいかい高齢者救援システム」用の発信機を身に着けていました。
通報を受けた市は、GPSによる見守りシステムを活用し、対象者が渋川市内にいることを確認。
即座に警察が駆けつけ、わずか45分後には保護に成功したとのことです。
見守りサービスの徘徊防止・早期発見に対する有効性が証明された形ですね。
高崎市のこのサービスは、今年の10月からスタートしたもので、まだまだ利用者は少ないとのことです。
今回の保護事例が、利用者数の増大および提供サービスの拡大に結びつけばと思います。
今回の高崎市に限らず、高齢者向けサービスの一環として、見守りサービス・見守りシステムを提供・構築している自治体はたくさんあります。
まだ導入できていない自治体でも、今後の導入に向けての検討や実証実験を行っているところはたくさんあり、今後ますます多くの自治体が見守りサービスを提供していくものと思われます。
こういった動き自体は素晴らしいものだと思いますが、気になるのは自治体をまたいだ時の連携がどうなるのかといった点です。
これらの見守りサービスの中には、各自治体ごとに独自のフォーマットで構築されているものも多くあり、対象者が自治体を超えたときにスムーズに連携・データ共有が行えるのかといった点については、やや疑問が残ります。
今回の事例からもわかるように見守りサービス自体は、高齢者の安全・生命を守るうえで、非常に有効な仕組みのひとつです。
高齢者が安心して暮らせる社会実現のためにも、自治体同士の連携あるいは官・民の連携なども視野に入れた、見守りシステムの拡大を期待したいところですね。