省略せずに表記すると『Continuing Care Retirement Community』となり、『継続介護付きリタイアメント・コミュニティ』と訳します。
CCRCはアメリカを中心に発展してきた概念ですが、近年、日本でもこのCCRCを構築しようとする動きが見られます。
政府が構想中の「生涯活躍のまち」がそれにあたります。
高齢者が主役として活躍できるコミュニティとして注目を集める一方、さまざまな課題・問題点が指摘されているCCRC。
本日はこのCCRCについて見ていきたいと思います。
CCRC(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)という言葉に聞きなれない方も多いでしょう。
CCRCとは、高齢者に元気なうちから移住・入居してもらうことで、高齢者自身にも積極的に社会活動に参加していただき、将来的に介護が必要になった場合は、継続して医療・介護サービスを受けながら暮らし続けることができる仕組みのことです。
医療・介護サービスを受けれる場という意味では従来の介護施設と同様ですが、決定的に異なるのが「元気なうちから入居する点」と「コミュニティ参加を通じて高齢者自身が支え手としての立場を担う点」です。
健康なうちから移住し、コミュニティ運営に参加したり、高齢者同士でサークル活動を行ったりします。結果として、CCRCには健康寿命を延伸する介護予防的な効果も期待できるわけです。
まさに高齢者の高齢者による高齢者のためのコミュニティ。それがCCRCです。
政府が日本版CCRCといえる「生涯活躍のまち」構想を練っていることは冒頭にてお伝えしました。
なぜ今このような動きがみられるのでしょう?
一つは高齢者自身の自立的かつ健康的な老後生活を実現するためです。
従来の介護施設では、どうしても身体が満足に動かせなくなった高齢者が半ば強制的に入所するといった側面がありましたが、CCRCでは元気なうちに自らの意思で移住を行いますので、それだけ高齢者自身の希望に沿った生活が実現できる可能性が上がります。
もう一つは地方への人の流れを加速させるためといわれています。
今さら言うまでもないことですが、東京は世界的にも類を見ないレベルの人口過密都市です。
加えて人口の高齢化といった問題も抱えており、東京圏内においては近い将来に医療・介護人材の不足とそれに伴う諸問題が頻発することがほぼ確実とされているような状態です。
政府としてはそのような状況を避けるために、地方にCCRC型の高齢者コミュニティを構築し、高齢者に地方へと移り住んでもらおうといった思惑があります。
いわば東京の過密問題と地方の過疎問題を解決しつつ、あわよくば地方創生も果たしてしまおうといった腹積もりのようです。
これだけ聞くと一石二鳥どころか一石三鳥の素晴らしい案のように思えますが、日本版CCRCに対しては批判的な声もかなりあります。なぜでしょうか?
日本におけるCCRCを語るときに、真っ先に出てくる批判が「日本とアメリカは違う」といった反応です。
アメリカで成功したからといって日本で成功する保証はない。ごもっともな意見だと思います。
また受け入れる地方側の問題もあります。入居先をどう確保するのか。十分な医療・介護を行えるのか。
そもそも都市部と地方では利便性において大きな差があります。その差を埋められるのかどうかというのも大きな問題でしょう。
仮にこれらの問題をすべてクリア出来たからといって、実際に高齢者が移住してくれるかどうかは別問題です。
CCRCの対象としているのが健康で元気な高齢者であるとはいえ、住み慣れた町を離れたくないと思う人は多いでしょう。
課題を挙げればきりがないというのが正直なところではありますが、それでもCCRCが高齢者問題に対する有望な解決策であるという点に変わりはありません。
日本版CCRCでは地方大学と連携して多世代の交流の場としようなんて話も出ていますし、今後の展開に期待大です!