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介護離職ゼロに向けて。特養老人ホーム運営事業者を対象に国有地を格安で貸し出す方向へ

介護施設イラスト今月6日、一億総活躍社会を掲げる安倍晋三首相は都内の講演で、首都圏内にある国有地90か所を民間相場の4分の1程度の価格で特別養護老人ホーム(以下、特養)運営事業者に貸し出す考えるがあることを発表しました。

政府が掲げる介護離職ゼロを実現するために、首都圏内の特養施設の整備を目指した発言と思われます。

首相はこの施策の実施時期について「早ければ今年度中にも」とし、また「首都圏以外でも実施を検討する」とも発言していました。

以前より特養施設の整備を急ぐといった方針を示していた安倍内閣ですが、今回の公演にて、その具体的なプランが明示されたといえるでしょう。

 

なぜ特別養護老人ホームの増設を急ぐのか?

今回の優遇政策も含め、政府が増設を急いでいる特別養護老人ホーム。
政府はなぜここまで特養施設の増設を推進しているのでしょうか?

その理由の一つに全国52万人とも言われる待機老人の存在があります。

社会福祉法人や地方自治体が運営する公的施設である特養施設は、一般的な老人ホームに比べて低料金で利用できることが多いです。そのため入居を希望する方は非常に多いのですが、施設および介護職員の数が足りておらず、入居待ちの順番待ちをしている高齢者(待機老人)が多数いるのが現状です。

この待機老人の数を減らすことで在宅介護者の負担を軽減、ひいては介護離職者の数をも減らそうというのが政府の思惑でしょうか。

また特養施設を増設することで、全国的に不足している介護職員の需要を呼び起こそうという狙いがあるそうです。

ただし介護職員の不足については、特養増設による需要アップは限定的、あるいは逆効果となることも考えられます。
その理由については後述します。

 

特養増設だけでは無意味?介護職員の待遇改善も含めた包括的な対応を

かねてから安倍首相が明言していた特養施設の増設施策ですが、当の現場からは冷ややかな反応が多く見受けられます。

その一番の理由は、介護の現場では建物以上に人材が不足しているからです。
十分な介護職員を確保することができずオープンを見送る老人ホームもある中で、箱物先行での政策は効果が薄いのではないかとの意見が多々あり、さらには職員不足のまま開設する特養施設が増えることで、昨今問題となっている老人ホームにおける虐待問題がさらに悪化するのではないかという懸念も存在しています。

介護職員不足の解消を目指すのであれば、薄給激務と言われている介護職の待遇改善、教育マネジメントの標準化、キャリアパスの構築などが必要だとする意見もあり、政府に対しては「人材」に焦点をあてたより包括的な施策の検討が求められます。

また介護離職ゼロを目指すうえでは、仕事をしながら介護を続けられる環境づくりというのも非常に重要で、官民が連携を取りながら介護休業制度の周知・拡大を行っていくことも必要でしょう。

こういった現場からの声に対し、首相は「介護人材の育成や介護休業の拡充、健康寿命の延伸などにも注力していく」と表明、「必要なものは補正予算にて対応を検討」との考えを示しました。

着々と進む高齢化の中で、十全とは言えない介護業界の環境整備。
決して楽観視はできない状況ですが、一歩一歩確実に歩みを進めていくほかなさそうです。

公開日:2015年11月10日  カテゴリー: | 関連キーワード: , ,

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